JIRAIZUKAN

CLIENT SIDE

クライアントが踏む地雷

営業トークだけ達者系地雷:Trigger.04

グラフィックデザイナーは、地獄のはじまり

普段からパンフレットやチラシなどのデザインを頼んでいた制作会社に、「WEBサイトもお願いできますか?」と聞いたところ、返ってきたのは自信満々の「もちろんできます!」の一言。しかし、実際にプロジェクトが進み出すと、その自信が“根拠なき万能感”だったと痛感することに。

デザインは社内で完結しても、WEBとしてのルールを無視したレイアウト、情報設計ゼロの構成、画像依存のデザインなど、現場を混乱させる要素が次々と露呈。そして、肝心のコーディングは外注任せ。任されたコーダーは制作側の意図がまるで汲めず、破綻寸前のプロジェクトに。

こうして、「あの時、きちんと確認していれば…」という後悔が残る、クライアント地獄が始まります。

ケーススタディ

ケース1:コーディング外注が機能せず、制作がグダグダに

デザインは社内のグラフィックチームで完了したが、それをWEBに落とし込むための知見が一切なし。コーディングは外注されたものの、実装担当者は明らかに混乱。「このデザイン、どう組めばいいんですか?」という質問が続出し、納期はズレ、クオリティも地に落ちる結果に。

ケース2:「自社にコーダーいます」→実は学生上がりのバイトレベル

WEB実装も任せられると言うので安心していたが、実際に出てきたコーダーは明らかに経験不足。Flexboxもレスポンシブも理解しておらず、HTML/CSSの基礎からやり直しレベル。誰もその技術力を見極められずに“実績ゼロ人材”を雇っていたことが後から判明。

ケース3:グラフィックの発想だけで組まれたWEB設計

「印象的なデザインを」と意気込んで作られたサイトは、全ページがビジュアル重視の画像配置。テキストは画像に埋め込まれ、リンクも直感的でない。アクセシビリティもSEOも完全に無視され、「これじゃ検索にも引っかからない」と後悔する羽目に。

解説

グラフィックのノウハウを持っている=WEBが作れる、というのは極めて危険な思い込みです。紙のデザインとWEBの構造には、目的・環境・設計思想・実装方法がまったく異なる明確な“壁”があります。

特に多いのは、デザインだけを社内で制作し、コーディングは外注という体制。一見合理的に思えるこの分業ですが、WEBの知見がないデザイナーが作ったデザインデータは、構造・可変性・ユーザー導線・サイズを全く考慮しておらず、「再現不能」「破綻するレイアウト」「動作が重すぎる」など、実装で苦しむ原因の宝庫になりがちです。

また、コーディング要員を社内に抱えていると説明されても、実際には技術力を見極めずに雇われた“なんちゃってコーダー”が作業を担当していることも少なくありません。HTMLタグの基本やCSS設計すら怪しいままCMSなんて理解すらしていないまま、現場投入されている事例も散見されます。

解決策

コーディング外注体制を確認する

「コーディングは外注です」と言われた場合、実装担当者の経歴・過去案件・対応範囲を事前に確認することが不可欠です。「誰がやるのか」を曖昧にしたまま進めると、後で大きなしわ寄せが来ます。

デザインにWEB視点があるかチェックしワイヤーフレームや仕様書の有無を確認

WEBサイト制作で重要なのは、見た目の美しさだけでなく、導線設計・情報整理・更新性などのWEB的な視点。それらが反映された設計資料が出てこない場合は要注意。グラフィック思考に偏っている可能性があります。

コーダーの技術力を可視化する

「コーダーがいる」と言われたら、具体的なアウトプットを見せてもらうのがベスト。公開中の過去案件のURLなど、客観的な判断材料を依頼しましょう。「自己紹介だけ」で判断してはいけません。

外注での分業体制が整っている会社を選ぶ

グラフィック専門の制作会社に頼む場合は、WEB構築まで経験豊富な外注チームと長く連携しているかどうかも大きなポイント。どこかで経験値のあるパートナーがプロジェクト全体を見ている体制が安心です。

まとめ

「できます!」の言葉に安心して依頼した結果、実は社内にはWEBに対応できるスキルがほとんどなかった。そんな事例は後を絶ちません。とくに「デザインは社内」「コーディングは外注」のスタイルは、WEB知識のないデザイナーによる非現実的な設計と、見積もりの甘さ、実装担当との連携ミスで、現場が迷走するリスクを常に抱えています。

“WEB制作”は、表面的なスキルではなく、プロジェクト設計・進行管理・技術選定・責任分担など総合的な力が試される業務です。その全体像を把握できていない企業が「できます」と言ってしまうことが、最大の落とし穴。

「できる」と言ったその人は、“WEBのプロ”として責任が持てる人なのか。それとも、ただの営業トークなのか。クライアント側も、その見極め力を持つことが、今後ますます重要になるでしょう。

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