JIRAIZUKAN

MANAGEMENT SIDE

営業・ディレクターが踏む地雷

クオリティ&責任感不足の地雷:Trigger.05

善意のつもりが会社に損害

制作の現場では、クライアントとの窓口を営業・ディレクターが担い、実作業をデザイナーやコーダーが担うという分業が一般的です。

その中で何より大切なのが、「報告・共有」。
誰が、どのタイミングでどんな対応をしたか、この情報がリアルタイムでチームに共有されていなければ、現場は簡単に崩壊します。

よくあるのが、納品後にクライアントから直接作業者へ修正依頼が入り、それに対応してそのまま更新まで完了。しかも、その報告がないまま、営業は「作業が終わっていたこと」を後から知るパターン。蓋を開けてみれば、ちょっとした文言修正レベルではなく、本来なら見積もりを立てて追加費用を請求すべきボリュームだったなんてことは珍しくありません。

報告がなかったことで、タイミングを逃して費用も請求できず、結果的に“タダ働き”になってしまうこの悲劇。
一つひとつの行動が、信頼と利益の両方に直結しているという自覚がないまま動く“勝手に完了マン”の存在は、営業・ディレクターにとって深刻な地雷です。

ケーススタディ

ケース1:あるコーポレートサイトの修正対応

納品後、クライアントが直接コーダーに軽微な修正を依頼。
「文字修正だから対応しちゃいました」と報告なしでそのまま更新まで完了。後日営業が気づき、修正内容を確認すると、複数ページにまたがる構成変更とCMS側の設定修正が含まれていた。当然、見積もりも未提出のままで“奉仕作業”扱いに。
最終的に社内工数を圧迫し、利益を圧縮する結果に。

ケース2:クライアントの「ついでにお願い」指示で、仕様変更を無償対応

公開後の細かな修正に対応中、クライアントから「このパーツ、スマホだと違う表示になりませんか?」と追加要望。その場の流れで「やっておきます」と回答し、仕様変更レベルの修正を実施。
営業は一切共有されておらず、納品後の報告メールで内容を知る。
結果、改修内容の把握と請求処理ができず、工数負担のみが積み上がる。

ケース3:CMS構築後の構成修正を無言で実施→テンプレート再設計レベルに

WordPressでCMSを構築した案件にて、納品後に「カテゴリを増やしてほしい」「一覧表示の出し分けを変更したい」といった要望がクライアントからコーダーへ直接。
気を利かせて対応するも、実際はテンプレート構造やカスタムフィールドを再設計する必要がある大掛かりな改修。
営業が気づいた時にはすでに更新完了、請求はできず、対応時間は丸1日超。
「それ、最初から相談していれば5万円請求できたよね…」という後悔が残る結果に。

解説

この手のトラブルの根本は、「進行状況や内容の共有がないまま勝手に完了させる」というフロー無視の姿勢にあります。
制作側は善意や習慣で「すぐやってあげる」感覚かもしれませんが、ビジネスの現場では、“誰が・いつ・何の目的で”動いているかが最重要。特にクライアントからの直接依頼に対し、窓口である営業やディレクターに報告もせず即対応してしまう行動は、結果的に「請求漏れ」や「仕様ブレ」の原因になります。

また、制作サイドは作業ボリュームを“体感”で判断しがちですが、営業から見れば、「どれだけ手間がかかったか」ではなく「どれだけ価値のある作業だったか」で料金は決まります。
つまり、たとえ1時間でも“設計に影響する修正”なら、見積りを立ててクライアントの合意を取るべき作業。それを無断で対応し、終わってから「やっておきました」と言われても、後の祭りなのです。

しかも、こういった人材に限って「修正依頼が多い」「指摘が細かい」といった不満を漏らすこともあり、現場の空気は悪化しがち。
“作業に対する責任感のなさ”が如実に現れる典型的な例といえます。

解決策

「クライアントから直接きた依頼=即対応しない」ルールを徹底

まず、「営業を通してから作業する」ことを制作チーム全体の基本ルールに。
直接指示を受けた場合も「その件、営業にも確認してから着手しますね」と一旦止めることが必須です。

「着手前に内容と規模を共有→指示が出てから作業」が鉄則

内容がどれだけ軽そうに見えても、営業に「これ対応していいですか?」のワンクッションを入れるだけで、確認・見積り・リスク共有が可能になります。

「工数ベースではなく“請求視点”で判断する」習慣化

たとえ15分の修正でも、“誰が見るか・どう使われるか”で価格は変わります。
請求の視点=営業の視点を理解してもらうことで、作業の価値を軽視しない姿勢が育ちます。

Slackやチャットワークで「対応予定→完了→営業報告」のフロー共有

対応する際は「対応予定:◯◯の修正」「完了:対応しました」「営業さんにも報告済みです」まで1セットで報告するよう徹底。
見えない場所で勝手に仕事が進まないよう、報告を業務の一部として組み込みます。

まとめ

「終わったあとに知る修正対応」ほど、営業にとって怖いものはありません。
クライアントから「対応ありがとうございました!」と感謝されても、「何のことですか?」と返すしかない虚無感。
見積もりも出せず、社内報告もできず、ただ「やってしまった後」で打つ手なし。
これほど損失が積もる作業はありません。

コーダーやデザイナーに求められるのは、作業スピードや技術力だけではありません。
「報告・連携ができるかどうか」で、利益の管理と信頼の維持が可能になるという意識が不可欠です。

“気を利かせて動いたつもり”が、実はチームにとって大きなマイナスになっていることもある。
「まず共有」を徹底できない人材は、長期的な信頼の構築が難しくなっていくでしょう。
制作のプロとして動くなら、「作業」よりもまず「共有」から。それが、地雷回避の第一歩です。

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