いつの間にかWebの何でも屋?
「SEOもお願いしたいんですけど」「メールの設定ってできますか?」「ついでにサーバーも見てもらえます?」
――言われて気づく。「あれ?これって、Web制作の話だったはずじゃ…?」
デザイン、コーディング、CMS実装までは制作の範囲。でも、気づけばサーバー管理、ドメイン更新、SEO施策、広告運用、果てはパソコンの設定相談まで。
制作以外の“なんとなくWebに関係ありそう”なことが、いつの間にか全部こっちの担当になっている。
今回は、制作の境界がどこか曖昧になりやすい理由と、どう線引きするかを考えます。
ケーススタディ
ケース1:「SEO対策も含まれてますよね?」
実装段階でのSEO配慮(構造・タグ設計など)は当然。でも、“検索上位に上がる施策”まで請け負うとなると、それはもう別の専門職。
なのに、デザイン込みで当たり前のように含まれていると思われがち。
ケース2:「Google広告も運用してもらえるんですか?」
“制作=その後の成果まで”という誤解から、広告やSNS運用まで一括で依頼されることも。
でも、広告運用は知識もスキルも別次元。プロジェクトの方向性がぶれる要因にも。
ケース3:「メールが届かないんだけど」→なぜか制作者が対応担当に
メールサーバーのトラブル、DNSの設定、MXレコードの確認…。
もはや制作とは別ジャンルの作業が、制作窓口経由で回ってきてしまう恐怖。
解説
この「なんでも屋化」の背景には、クライアントのWebに対する理解の“ざっくりさ”と、“とりあえず聞けばなんとかしてくれるだろう”という思い込みがある。
特に中小企業や個人事業主の現場では、Web=一括で任せるもの、という意識が根強い。Web制作会社=IT担当、のような感覚で、制作とは関係のない業務まで自然に依頼されてしまうのだ。
そして、もうひとつの要因が、ディレクターや営業の“とりあえず引き受けておく”文化。
「できますよ」と言ったほうが話が早く進むし、クライアントにも喜ばれる――。でもそれが、制作サイドには“丸投げ”として降ってくる。
SEO対策、広告運用、メールサーバーの設定、SSL対応、問い合わせフォームの自動返信のトラブル対応、Googleビジネスプロフィールの登録サポートまで、気づけば「それ、うちの業務範囲でしたっけ…?」という案件が山積みに。
さらに問題なのは、これらの作業は“見えにくい”にもかかわらず、効果や成果が問われやすいこと。SEOで順位が上がらなければ「なんか違ったよね」、メールが届かなければ「サイトが悪いんじゃない?」と誤解されがち。
制作の手を止めて、原因の切り分けやクライアント対応に追われ、結果、本来のデザインや実装に集中できない状況が生まれてしまう。
このような背景から、制作チームが本業に集中するためには、“制作とそれ以外”の境界線を明確に引くことが欠かせない。
解決策
“制作の範囲”を初期段階で明示する
契約・見積時点で「どこまでが業務範囲か」を明確に記述。曖昧な言葉で終わらせない。
範囲外の業務には“別料金・別対応”を明言
SEO対策、広告運用、サーバー管理などは、外部パートナー紹介やオプション対応で別料金に。対応するにしても、制作費とは切り離す。
依頼された内容が制作外なら、断る勇気を持つ
なんでも引き受けて“できる人”になってしまうと、後々本来の仕事に集中できなくなる。
社内での役割分担と責任所在を整理する
営業・ディレクターが曖昧に引き受けてしまわないよう、社内ガイドラインやフローを整備。
まとめ
Web制作の現場では、「ちょっとWebに関係あるっぽいこと」が、
制作の仕事に自然と含まれていく“境界の曖昧化”が日常的に起きています。
でも、私たちの仕事は“なんでも屋”ではありません。
それぞれの分野に専門家がいるからこそ、成果も質も担保できる。
「できるからやる」のではなく、
「どこまでやるべきか」「どこからが別の専門領域か」を丁寧に線引きすることが、
健全なプロジェクト運営と信頼関係の維持につながります。
- ・ 本来の業務に集中するためにも、“やらない勇気”を持つ
- ・ 契約や見積段階で、責任の範囲を言語化しておく
- ・制作=“Webに関わる全部”ではないという認識を育てていく
私たちは、Webの“何でも屋”ではありません。
でも、“プロフェッショナル”であり続けたいのです。
