JIRAIZUKAN

PRODUCTION SIDE

制作サイドが踏む地雷

契約・仕様の曖昧さが招く地雷:Trigger.04

クリエイティブは魔法じゃない!

「それって、そんなに大変なこと?」「手間がかかるのは、そっちの都合だよね?」まるで“ポチッと”作れるかのように語られる、クリエイティブ業務。でも現実は、地味で繊細で、試行錯誤の積み重ね。思考と技術の積算でできている。

例えば、たった1枚の画像差し替え。「画像を変えるだけでしょ?」と言われても、その画像をリサイズし、デザインとの整合性を取り、ページ全体をチェックし、場合によっては複数デバイスで確認し直す。この“見えない手間”を「そっちの都合」と一蹴されると、制作者としては心がすり減っていく。クライアントや営業が悪気なく発してしまう“無理解な言葉”は、信頼関係を蝕む大きなトリガー。

今回は、この“手間の軽視”がなぜ起きるのか? どう防げばいいのか?を探っていきます。

ケーススタディ

ケース1:「このバナー、もうちょっとだけ目立たせて!」

言葉では「ちょっと」でも、配色やレイアウトの見直し、視認性の検証など、思考と手作業の連続。
「なんでこれだけで時間がかかるの?」と言われて、気持ちはズタボロに。

ケース2:「え?スマホ対応も込みじゃないんですか?」

PCのみで受注したのに「スマホでも見られるようにして」と当然のように言われる。契約書には明記済みだが、「追加料金がかかるの?」と不満顔。確認不足なのに、責任はなぜかこちらに。

ケース3:「画像の差し替えお願い!あと10枚!」

「URL送るから差し替えよろしく〜」とだけ伝えられたが、実際はサイズ違い・形式バラバラ・文字被りなど修正満載。
その工数を説明しても「え、それだけで?」と鼻で笑われた。

解説

デザインやコーディングなどの制作作業は、「頭脳労働」と「手作業」のハイブリッド。それぞれの作業には、目に見えない時間と判断が積み重なっている。

しかし非クリエイティブな立場の人にとって、それは“不可視の工程”。「ボタンひとつでできる」「AIで一瞬」といったイメージが先行し、プロの仕事を軽視してしまうことも少なくない。
結果として、「それって、あなたの都合でしょ?」「もっと早くできるんじゃない?」という発言につながる。

ここで重要なのは、“分かってくれない人が悪い”と感情的になるのではなく、「見えない手間を見える化する」工夫。
クリエイター側が、自身の仕事の価値や構造を、相手に届く形で伝える努力もまた求められる。

解決策

作業内容を明文化して共有する

タスク管理表やチャットなどで、「一見シンプルな変更」にどんな作業が含まれるかを簡潔に説明する。

見積もり段階で“作業の背景”を伝える

単なる「バナー作成:●円」ではなく、「構成+デザイン+検証=●円」と記載することで、工数の根拠を明示。

作業報告をルーティン化する

「○○対応完了しました(差し替え+画像補正+スマホチェック済)」のように一言添えるだけでも、労力の“見える化”になる

「軽く見られがちな作業」をナメられない仕組みに

“ちょっとした作業”が積み重なると工数が膨らむことを、過去の例と共に資料化しておくと有効。

まとめ

制作の“手間”は、目に見えないだけで、確実に存在する。
そしてそれは、「制作者の都合」ではなく、「品質を守るために必要な工程」。

この誤解が放置されると、クリエイターのモチベーションを下げ、結果的に品質低下や信頼崩壊を招くこともある。
だからこそ、手間に対する正当な評価や説明は、プロジェクトの円滑な進行に欠かせない。

  • ・ 「見えない手間」こそ、丁寧に伝える
  • ・ 工程を見える化し、価値を共有する
  • ・ 小さな軽視が、大きなストレスになる前に防ぐ

“分かってもらえない”と嘆く前に、“どうすれば伝わるか”を考えていくことが、プロとしての姿勢でもあるのです。

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