PRODUCTION SIDE
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「それって、そんなに大変なこと?」「手間がかかるのは、そっちの都合だよね?」まるで“ポチッと”作れるかのように語られる、クリエイティブ業務。でも現実は、地味で繊細で、試行錯誤の積み重ね。思考と技術の積算でできている。
例えば、たった1枚の画像差し替え。「画像を変えるだけでしょ?」と言われても、その画像をリサイズし、デザインとの整合性を取り、ページ全体をチェックし、場合によっては複数デバイスで確認し直す。この“見えない手間”を「そっちの都合」と一蹴されると、制作者としては心がすり減っていく。クライアントや営業が悪気なく発してしまう“無理解な言葉”は、信頼関係を蝕む大きなトリガー。
今回は、この“手間の軽視”がなぜ起きるのか? どう防げばいいのか?を探っていきます。
言葉では「ちょっと」でも、配色やレイアウトの見直し、視認性の検証など、思考と手作業の連続。
「なんでこれだけで時間がかかるの?」と言われて、気持ちはズタボロに。
PCのみで受注したのに「スマホでも見られるようにして」と当然のように言われる。契約書には明記済みだが、「追加料金がかかるの?」と不満顔。確認不足なのに、責任はなぜかこちらに。
「URL送るから差し替えよろしく〜」とだけ伝えられたが、実際はサイズ違い・形式バラバラ・文字被りなど修正満載。
その工数を説明しても「え、それだけで?」と鼻で笑われた。
デザインやコーディングなどの制作作業は、「頭脳労働」と「手作業」のハイブリッド。それぞれの作業には、目に見えない時間と判断が積み重なっている。
しかし非クリエイティブな立場の人にとって、それは“不可視の工程”。「ボタンひとつでできる」「AIで一瞬」といったイメージが先行し、プロの仕事を軽視してしまうことも少なくない。
結果として、「それって、あなたの都合でしょ?」「もっと早くできるんじゃない?」という発言につながる。
ここで重要なのは、“分かってくれない人が悪い”と感情的になるのではなく、「見えない手間を見える化する」工夫。
クリエイター側が、自身の仕事の価値や構造を、相手に届く形で伝える努力もまた求められる。
タスク管理表やチャットなどで、「一見シンプルな変更」にどんな作業が含まれるかを簡潔に説明する。
単なる「バナー作成:●円」ではなく、「構成+デザイン+検証=●円」と記載することで、工数の根拠を明示。
「○○対応完了しました(差し替え+画像補正+スマホチェック済)」のように一言添えるだけでも、労力の“見える化”になる
“ちょっとした作業”が積み重なると工数が膨らむことを、過去の例と共に資料化しておくと有効。
制作の“手間”は、目に見えないだけで、確実に存在する。
そしてそれは、「制作者の都合」ではなく、「品質を守るために必要な工程」。
この誤解が放置されると、クリエイターのモチベーションを下げ、結果的に品質低下や信頼崩壊を招くこともある。
だからこそ、手間に対する正当な評価や説明は、プロジェクトの円滑な進行に欠かせない。
“分かってもらえない”と嘆く前に、“どうすれば伝わるか”を考えていくことが、プロとしての姿勢でもあるのです。