JIRAIZUKAN

PRODUCTION SIDE

制作サイドが踏む地雷

契約・仕様の曖昧さが招く地雷:Trigger.01

軽く言われがち。“ちょっと修正”が時間を奪う

その一言、なんだか親しげで軽やかに聞こえるけれど、実は制作者にとっては想像以上の破壊力を持っています。
「チャチャっと直しておいて♪」「ちょっとだけ修正したいんだけど」一見、ささいなお願いに聞こえるこの言葉たち。でもその裏側には、データ確認・作業調整・再出力・テスト反映・連絡など、見えない工程が静かに積み上がっているのです。
しかも、それが「無料でお願いね?」という空気とセットで放たれると本来対価が発生すべき“業務”が、“ちょっとした好意”のように扱われてしまい、やがてそれが当たり前になっていきます。
気づけば「これもお願い」「あれもついでに」と依頼がエスカレートし、制作チームの時間もモチベーションも、じわじわと削られていく結果に。
プロジェクトの信頼関係を守るためにも、“小さな修正”ほどしっかりと線を引くことが必要です。甘く見られがちな“微調整”の裏側を、今こそ明らかにします。

ケーススタディ

ケース1:画像1枚の差し替えで、バナー全体が崩壊寸前に

「写真をこの画像に変えるだけで大丈夫です♪」と言われて受けた修正依頼。
しかし、届いた写真はこれまでと構図もトーンもまったく異なり、周囲の要素とのバランスが大崩れ。結果として、バナー全体の再構成が必要になり、“差し替え”どころか新規制作に近いボリュームに。

ケース2:テキスト3行の修正で、半日がまるっと潰れた話

「この文章、ちょっとだけ直してもらえればOKです」と軽く頼まれたが、実際にはその文言が全ページに共通で使われていた。
CMS非対応の部分だったため、すべて手作業で修正し、リンクやレイアウトの再確認まで発生。結局、半日が修正作業で消えた。

ケース3:軽く言われた“ついでにこれも”が、地味に重い追加作業に

本件とは直接関係のない要素について、「ついでにこれも直しておいてもらえる?」と軽く言われることがある。一見すると善意で引き受けたくなるが、内容によっては影響範囲の確認・再テスト・バックアップ作業なども発生し、予想以上の時間と工数を要する。契約書には記載されていない“ついで依頼”が常態化すると、いつの間にか業務範囲が無限に広がってしまう危険性も。

解説

「ちょっとした修正だからお願い♪」という言葉の裏には、「そこまで大変じゃないでしょ?」という一方的な想像が含まれていることが少なくありません。
しかし実際の制作現場では、修正内容の調査・作業・確認・再アップ・再通知など、表からは見えない工程が複数連動して発生します。さらにこの「ここまでは無料でやってくれるよね?」という空気が常態化してしまうと、制作者の時間や技術、そして責任感までもが軽視されるようになりがちです。

本来は対価が発生するべき作業を“おまけ”感覚で提供し続けていると、いつの間にか「サービスのつもりが、搾取の始まり」へとすり替わってしまうのです。

解決策

「“ちょっと”の定義」を明文化

契約時に、無料で対応できる範囲を明文化。作業時間●分以内、など具体的に示す。

契約外修正は見積もりベースで

「ご要望ありがとうございます。追加費用としてお見積もりいたしますね」と即座に切り替える習慣を。

「軽めの作業=無料」ではないと伝える

技術提供には必ず価値とコストがあることを、優しく、でもハッキリ伝える。

初期の契約時に“修正ポリシー”を添付

修正の範囲、回数、条件を整理したシートやページを最初に提示しておくと、あとあと揉めにくくなる。

まとめ

「ちょっとした修正だから♪」その軽やかな一言の裏側には、制作者が費やす調査・作業・確認といった見えない努力や時間が、しばしば見落とされています。
たとえ一つひとつは小さな対応でも、“ちょっと”が積み重なれば、それは明確に“業務”としてのボリュームとなり、プロのリソースを確実に消費しているのです。

  • ・ どんな作業にもコストと責任が発生する
  • ・“無料”に慣れさせない文化を育てる
  • ・ 曖昧なお願いには、明確な対応で返す
  • ・ 制作者の価値を守るのは、ルールと説明力

プロジェクトの健全な関係性は、“ちょっと”をナメない誠実さから。「無料=善」ではなく、「正当な対価=信頼」という視点で付き合える関係を築いていきましょう。

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