JIRAIZUKAN

PRODUCTION SIDE

制作サイドが踏む地雷

クライアントの技術理解不足による地雷:Trigger.01

スマホで撮った写真を出してくる無邪気な破壊力

「うちのスタッフがスマホで撮ったやつあるから、これ使ってください」
「わざわざカメラマン呼ばなくても大丈夫でしょ?」

そんな言葉に、目の前が真っ暗になった経験、ありませんか?

クライアントから軽いノリで送られてくるスマホ写真。
解像度・構図・光の当たり方・画質補正…すべてにおいて商用利用には耐えられない。
でも本人は「十分きれいでしょ?」と満足げ。

実際には、スマホ写真を無理やり使えば、どんなにデザインがよくても“全体のクオリティが一気に陳腐化”します。
ビジュアルの印象は、そのまま「ブランドの印象」になって跳ね返ってくるのに。

今回はこの“スマホ写真問題”の背景と、現場ができる対応策を掘り下げます。

ケーススタディ

ケース1:「商品の写真、スマホで撮ったから、これでバナー作って」

背景がぐちゃぐちゃ、ライティングも甘い。
しかも画質が粗くて拡大できない…。結局、デザインではどうにもならない地獄。

ケース2:「社長の顔写真、スナップから切り抜いて」

ピントが甘く、画質も古く、なぜか飲み会の背景がぼんやりと…。
公式サイトに載せるにはあまりにも厳しい、でも“社長指定”なので言いづらい。

ケース3:「スマホのポートレート機能で十分でしょ?」

確かに最近のスマホカメラは高性能。
でも商用写真として必要な“照明・レンズ・レタッチ”は、やっぱりプロの技術が必要。

解説

「スマホで撮った写真でも十分」この発言の背景には、
写真の“見た目の良し悪し”と“使えるデータ品質”の違いに対する理解不足がある。
とくにWebや印刷物で使用する写真には、以下のような技術的要件がある。

解像度(dpiやサイズ)
構図と余白(トリミングの自由度)
ライティング(陰影や色味)
ノイズやブレの処理
背景との調和や素材感の統一


スマホ写真は「記録」としては優秀でも、「商用表現」には不向きなことが多い。
さらに問題なのは、「プロに頼む=コスト増」とだけ捉え“ブランド価値”を守るための投資という視点が抜け落ちている点。

「わざわざプロを呼ぶ必要ある?」という軽視の裏には、社内で「コストをかけてる風」を避けたい営業や担当者のパフォーマンス的判断も見え隠れします。
そのツケが、すべて制作サイドにのしかかる構図は、そろそろ変えていくべきです。

解決策

写真の“使える/使えない”判断基準を明示する

事前に「こういう画質・構図では難しい」と例を示すと、主観のズレを防げる。

撮影を依頼するメリットを可視化する

「売上に直結する」「信頼感に影響する」など、ビジュアルの影響力を具体的に伝える。

撮影クオリティによる仕上がりの差を実例で共有

「スマホ写真Ver」と「プロ撮影Ver」を並べて見せることで、納得を得やすくする。

スマホ素材で進める場合は“限界ライン”を明記

「この画質ではA4印刷には耐えられません」など、リスクを共有しておく。

撮影代を“オプション扱い”にして見積に明記

「素材支給時と撮影手配時では金額が変わる」ことを明文化しておくとトラブル防止に。

支給画像の加工にもコストが発生することを説明

「明るさ補正」「背景処理」「ノイズ除去」などの編集作業にも時間と技術がかかるため、“素材があるからタダ”ではないという点を事前に伝えておく。

まとめ

「スマホで撮った写真でいいよね?」という軽い一言の裏には、“写真の重要性”や“品質の影響力”への理解不足が隠れています。

ビジュアルは、第一印象を左右するもっとも強力な武器。
そこに妥協があれば、どれだけデザインを工夫しても伝わる力は半減してしまう。
しかも、画質の悪い写真を“なんとか使えるように加工する”には、技術と時間がかかり、当然ながらそれにはコストも発生します。

  • ・ 「写真が悪いと、全体の印象が悪くなる」
  • ・「支給素材でも“編集”には手間と費用がかかる」
  • ・「ちゃんと撮ることが、結果的に一番コスパがいい」

こうした認識をクライアントと共有し、必要に応じて“撮影”や“プロによる画像提供”を正当に提案できるようにしておきたいですね。

Loading spinner