JIRAIZUKAN

PRODUCTION SIDE

制作サイドが踏む地雷

チーム内の認識ズレによる地雷:Trigger.04

「時間を返せ!」決定事項ちゃぶ台返し問題

「この仕様でいきましょう!」
「方向性バッチリですね!」
そんなふうに、みんなで納得して合意したはずの会議。全員がうなずき、議事録も残し、いざ実装へ。順調に進む……はずだったのに。

数日後、雲行きが怪しくなります。

「え、やっぱりこのデザインちょっと……」
「うーん、この構成、再検討した方が良くないですか?」
「クライアントが“イメージと違う”って言ってた件、反映できてる?」

そして、こういった“ちゃぶ台返し”発言に限ってなぜか代替案は出てこない。明確な指示もなく、感覚的な違和感だけが共有され、「そっちでうまくやってよ」と丸投げされがち。

現場からすれば、これは完全に「リスケ&リワーク確定」の地獄案件。進んでいた作業は白紙、スケジュールは狂い、関係者の温度差は広がるばかり。

けれど冷静に振り返ると、根本の原因は「会議での詰めの甘さ」や「責任の所在の不明確さ」、そして“決定したこと”を軽々と覆す文化そのものにあることが見えてきます。

今回は、「なぜ決まったことが簡単にひっくり返るのか?」という構造的な問題と、それに振り回されないための対策を整理していきます。

ケーススタディ

ケース1:「その場での“なんとなく合意”が仇に」

会議では、「まぁこれで行こう」と全員が頷いたけど、実は誰も心から納得していなかった。
結果、実装が始まってから「あれって本当にこれでよかったんだっけ?」と疑問が浮上。
“とりあえず通す会議”が、あとあと大きなブレーキに。

ケース2:「関係者が後からしゃしゃってくる」

実装直前になって、「上の人がひとこと言ってきて…」「広報チームが別の視点で…」など、
会議に参加してなかった人が口を出し始めるパターン。
合意形成ができていないまま、別の判断軸が突如出現する混乱状態。

ケース3:「仕様が“ふんわり”決まっていた」

たとえば「このバナー、動きがある感じで」といった曖昧な表現で会議を終えた結果、
いざ制作チームが具体化したときに「イメージと違う」と言われてしまう。
曖昧な言葉が、後の“認識ズレ爆弾”になる。

解説

この問題の根っこには、「会議=決める場」ではなく、「とりあえず流す場」「その場の空気で乗り切る場」になってしまっているという、構造的な甘さがあります。
そもそも、会議中に皆が静かに頷いていたからといって、それが本当の“納得”や“了承”とは限りません。

  • ・本音を言ったら空気が悪くなる
  • ・今ここで指摘しても面倒になるだけ
  • ・「あとでチャットで確認すればいいか」と思っている

そんな心理が集まって、「とりあえず賛成っぽくしとく」という集団意思決定のごっこが行われていることが多々あります。
でもそれって、決めたことにはなっていないんですよね。

加えて、“会議後の確認・整理”がされていないのも大きな問題です。
会議中には「OKです!」となっていても、記録が曖昧だったり、関係者に正式に共有されていなかったりすると、「そんな話だったっけ?」「聞いてない」「言った言わない」で、結局ひっくり返る。

さらに、“決められる人”が参加していない会議も多いもの。
その場に発言力のある人がいないまま会議を終えると、「あとからあの人が違うこと言ってきたんで…」という二段階合意ルートが発動し、決定が簡単に覆されます。

つまり、会議を開いてるけど、「決定の場」になってない。
これが、実装段階でのリワークを引き起こす温床になっているのです。

解決策

会議では、“決まったこと”を明文化・共有する

口頭で流すのではなく、「決定事項」「担当」「変更不可範囲」などを明文化して全員に共有。

その場にいない“キーマン”を、あとから出てこさせない仕組みを作る

承認フローや発言権のある人物を事前に明示しておく。
プロジェクトに関与するなら、責任も共有するのが筋。

曖昧な表現を見過ごさず、具体的に落とし込む

「イメージ」「それっぽく」「ざっくり」などの言葉はすべて爆弾。
会議で「つまりそれはこういうことですね?」と、制作に落とし込める表現に変換しておく。

議事録&“決定の確認”を必ず実施

誰が・どの範囲で・何を了承したのかを明記した議事録を、会議後に即共有。
会議の“後処理”まで含めて初めて合意が成立します。

まとめ

「決めたはずのことが、いつの間にか変わってる」。
これは現場あるあるではありますが、放っておくとプロジェクトの信頼も、メンバーのモチベーションもガタ落ちしていきます。

そもそもスケジュールも見積もりも、“決まった内容”を前提に組んでいるもの。
実装フェーズでの方向転換は、想像以上にダメージが大きいのです。

だからこそ、

  • ・会議は“決めたことを記録する場”として徹底
  • ・あとから口出しできない仕組みを設計
  • ・曖昧な言葉は具体に変える意識

……といった、“決定の質”を上げる取り組みが欠かせません。

会議はただの通過点ではなく、プロジェクトの舵取りそのもの。
流されず、流させず、ひとつひとつをしっかり積み上げていくことが、結果的に「作ってよかった」と思えるモノづくりにつながります。

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