JIRAIZUKAN

PRODUCTION SIDE

制作サイドが踏む地雷

営業・クライアントとの認識のズレによる地雷:Trigger.06

営業の放った無責任発言で現場が迷走

「え、それ…初耳なんですが」
クライアントとの打ち合わせ中、ふいに放たれるひと言。一瞬で場の空気が凍りつき、制作チームの頭の中は「どう対応すればいい?」とフル回転。そのセリフは、地雷級の破壊力をもつ“後出しジャンケン”の常套句。
「営業がOKって言ってたんだけど?」
それは、これまで積み重ねてきた設計・仕様・スケジュールのすべてを無効にする魔法の呪文。確認も共有もないまま交わされた“非公式の合意”が、あたかも全体決定であるかのように押し出される。しかもこの発言、営業担当者がその場にいない時ほど威力を発揮する。
「そのOK、本当に正式ですか?どこまでをOKしたんですか?誰に?いつ?」
そんな問いも飲み込まれ、まるで“営業”という肩書きがすべてをねじ伏せるかのような不条理。でも現場には、それを否定する時間も、再確認する猶予もない。
最終的に、矛盾した指示と足りない説明の穴を、現場チームが埋めるしかなくなる。
“営業の一言”でプロジェクトが迷走する。
それがどれだけ現場にとって致命的かを、もう一度考えてほしいのです。

ケーススタディ

ケース1:「そんな仕様、初耳なんですが?」

「営業さんは“こっちの方向でもOKって言ってました”」と突然の一言。制作がまったく知らされていない内容で、しかも“OK”と伝えた営業本人は現場とは別の理解だった様子。
すでに組み上げたレイアウトや設計は、ほぼ白紙に。進行中の工程が「非公式のやり取り」ひとつであっさり覆る理不尽。最も厄介なのは、その“OK”がどこまで正式なものだったのかを誰も証明できない点にある。

ケース2:「営業とだけで進んでた案件」

営業がクライアントと密にコミュニケーションを取りながら、プロジェクトが水面下で進行していた案件。
しかし、制作チームには何も共有されないまま、形だけの指示で作業がスタート。ようやく納品目前になって、「実はこんな要望も出てて…」と新たな仕様やデザイン変更が次々と降ってくる。
工程表は崩壊し、対応可能だったはずの作業が、“時間切れ”という理由で全て間に合わなくなる。
営業とクライアントだけの“非公開プロジェクト”が、最後にしわ寄せとなって現場に押し寄せる典型パターン。

ケース3:「営業がYESでも、制作はNOだった話」

営業がその場のノリや印象で「このくらいなら対応できますよ!」と軽く返答してしまう。クライアントは当然「じゃあ、この仕様で」と確定案件として進めてくるが、その内容は、制作にとっては初耳であり、工数も予算も完全にオーバー。
現場に相談も確認もないまま“できる前提”で話が決まり、制作は後から無理やり帳尻を合わせさせられることになる。言った本人は悪気もなく、「あれ?それダメだったっけ?」と平然。現場の苦労と信頼関係が、一言の“軽さ”で壊されていく瞬間である。

解説

「営業がOKって言ってたんだけど?」という一言には、営業担当者の個人的な発言と、正式な合意事項との区別がないまま、“既に確定した話”として押し付けようとする危うさがあります。

営業と制作、それぞれの役割や視点が違うからこそ、共通認識をもとに進行管理を行うのがプロジェクトの基本。
その橋渡しをスキップして、片方の発言を“公式コメント化”してしまうと、制作チームは「それ、本当に決まったことですか?」という確認から始めなければならなくなります。

さらに問題なのは、「営業が言ってた」ことを理由に、制作側の責任範囲をねじ曲げようとする圧。
この構造が繰り返されると、制作チームの信頼も疲弊し、クオリティだけでなく、チーム全体のモチベーションにも大きなダメージを与えます。

解決策

言質は「議事録 or メール」で取る

どんなに些細な話でも、決定事項はメールやチャットで共有。口頭のやり取りは“参考意見”止まりに。

営業・制作・クライアントでの三者共有を徹底

営業経由で話が動いた場合でも、制作への公式通知がない限り、仕様変更・追加要望は一旦ストップ。

「営業がOK」は“確認対象”に留める

「その内容、制作側でも確認して折り返しますね」とワンクッション置くことで、現場の防御力アップ。

「営業だけで話を進めない」ルール化

特に仕様・スケジュール・費用に関する話題は、制作メンバーも含めた上で正式決定するプロセスを明文化。

まとめ

「営業がOKって言ってたんだけど?」は、プロジェクトの根幹を揺るがす“後出しジャンケン”そのもの。
発言者本人に悪意がなくても、それがきっかけで仕様がねじ曲がり、制作側が“言われてない責任”を押しつけられる構図は、健全とは言えません。

  • ・発言と決定は別物
  • ・“正式な合意”には全員が関わる必要がある
  • ・情報共有の抜けは、信頼の抜けにつながる
  • ・一貫した情報設計が、プロジェクト全体の品質を守る

「誰が言ったか」ではなく、「どう伝わり、どう記録されているか」それを大切にできる現場こそ、チームの力を最大限に発揮できます。

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