JIRAIZUKAN

PRODUCTION SIDE

制作サイドが踏む地雷

クライアントの技術理解不足による地雷:Trigger.03

プラグイン入れすぎてWordPressが悲鳴中!

「なんか便利そうだったから入れといたよ!」
「無料だし、いっぱい入れても平気でしょ?」

そんな軽いノリで次々とプラグインを追加するクライアント。
一見、WordPressの“自由に機能を追加できる魅力”をフル活用しているようにも見えるけれど、実際はその“自由さ”こそが、最大の落とし穴。

プラグインの乱用は、サイト全体の安定性・セキュリティ・保守性を蝕む“時限爆弾”になり得ます。便利そうに見えるものほど、後々トラブルを引き起こしやすいもの。

今回は、WordPressでありがちな“プラグイン地獄”の実例と、その対策について掘り下げます。

ケーススタディ

ケース1:「勝手にプラグインを5つ追加して、表示崩れ」

SEO対策・スライダー・キャッシュ系など、あちこちから拾ってきたプラグインを無造作に追加。
見た目も崩れ、動作も重くなったうえに、管理画面もごちゃごちゃに。
原因が分からず「何が悪いの?」と他責モードに突入。

ケース2:「WordPressのバージョンアップでサイトが真っ白に」

自動更新でWordPressが最新バージョンに。
ところが使用中のプラグインの一部が未対応で、互換性エラー→サイト真っ白。
復旧には多大な時間とコストが必要に。

ケース3:「PHPのバージョンを上げたら、機能の一部が動かない」

サーバーのPHPを推奨バージョンに更新した途端、一部機能が動作不良に。
原因は数年前に導入された古いプラグイン。
しかもそのプラグインはすでに配布終了。代替手段もなく、全面作り直しに…。

解説

WordPressのプラグインは、サイトにさまざまな機能を追加できる強力なツール。
でもその反面、依存しすぎるとサイトの保守性・安全性が極端に下がるという側面があります。

よくあるトラブルの例

  • ・WordPressやPHPのバージョン更新に追従しないプラグイン
  • ・無料プラグインの開発終了やサポート切れ
  • ・プラグイン同士の干渉で発生する不具合
  • ・予期しないUI崩れや表示遅延
  • ・管理画面が煩雑化し、運用担当が混乱
  • ・誰が何をいつ入れたか不明になり、責任の所在が不明確に

中でも特に厄介なのが「無料プラグインの責任の曖昧さ」。
不具合があっても「無償だからサポート対象外です」と言われるケースも珍しくありません。

にもかかわらず、ディレクターや営業が「プラグインを入れれば○○の機能も追加できますよ!」と、軽く提案してきては、その設計・検証・調整のすべてを制作側に丸投げ。
“やってる感”の演出のしわ寄せが、いつも現場に降ってくる構造です。

解決策

導入可能なプラグインのリストを事前に提示・制限する

実績のある定番系に絞り、「その他は要相談」と明示。
クライアントが独自に追加しないよう、管理権限の制限も検討。

「プラグイン追加=新規開発に準ずる作業」であることを明文化

仕様書や契約書に「導入・検証・調整には費用が発生する場合がある」と記載。

無料よりも有料プラグインを選択する判断基準を整える

責任の所在を明確にし、開発元のサポートが受けられる有料系を積極的に提案。
結果的にトラブルが少なく、長期的なコスト削減にもつながる。

PHPやWordPressのバージョンアップとの関係性を事前説明

「未来のアップデートで不具合が出るリスクがある」という前提をしっかり共有。
保守契約の必要性もここで伝える。

定期的な棚卸しと不要プラグインの整理を習慣化

「今使ってないけど、昔入れたまま…」が一番危険。定期点検を提案。

まとめ

WordPressは、プラグインの存在によって多機能かつ柔軟なサイト構築が可能になります。
ですがその反面、自由すぎるゆえにコントロールを誤ると“技術負債”の温床になってしまうという一面も持っています。

「便利そうだから入れた」「無料だし、使えるものは使わなきゃ損」そんな気軽な判断で増えていくプラグインたち。しかしそのひとつひとつが、PHPやWordPressのバージョンアップに対応しているとは限りませんし、ある日突然、「サポート終了」や「互換性エラー」「セキュリティホールの発見といった事態に直面することも。

さらに、ディレクターや営業、あるいはクライアントの「〇〇もできたらいいな」という軽い提案が、制作側に大きな調査・検証・調整の負担をもたらすことも日常茶飯事。
とくに無料プラグインにおいては、不具合が起きても誰も責任を取らないという厄介な側面があるため、「ただで追加できる便利機能」ではなく、「導入にあたって慎重な判断が必要な外部パーツ」として捉えるべきです。

だからこそ、プロとしては以下の姿勢が求められます。

  • ・プラグイン導入に関するルールをあらかじめ共有し、勝手な追加を防止
  • ・無料・有料の選定基準を明示し、責任の所在を明確に
  • ・WordPressやPHPの更新リスクを伝え、保守契約の重要性を説明
  • ・ 「一度入れたら終わり」ではなく、定期的な棚卸しの提案

プラグインの本質は、「その時、楽をするためのツール」ではなく、「長期的にサイトを安定して運用するためのパーツ」であるという理解を共有することが何より重要です。

設計段階から保守のことまで考える、地味だけど堅実な判断こそが、数年先でも安心して使えるサイトを育てていく上での最大の“投資”になります。
現場の知見を活かし、クライアントにも“本当の意味での選択肢”を提示していく。
それが、制作側の腕の見せどころです。

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