JIRAIZUKAN

PRODUCTION SIDE

制作サイドが踏む地雷

営業・クライアントとの認識のズレによる地雷:Trigger.05

説明放棄の丸投げ爆弾!

「見ればわかると思うんですけど…」
この一言に潜む“優しさの皮をかぶった爆弾”に、あなたは気づいていますか?

これは、言葉の節約ではなく、説明責任の放棄。
制作物において重要なのは、「どう見て、どう理解すればいいか」が制作者側とクライアント側で共有されていること。
しかしその橋渡しを放棄し、「見たらわかるでしょ?」で済まされると、現場は迷子になり、やり直し・すれ違い・感情のすれ違い…さまざまな地雷が連鎖していきます。

「見ればわかる」は、むしろ“見なきゃわからない”ものにこそ、多用される魔法のフレーズなのです。

ケーススタディ

ケース1:添付ファイルだけ送られてきた

クライアントから「修正入れておきました。ファイル見ればわかると思います」
届いたのは朱書きや赤字コメントなし、しかも“修正後の完成版”のみ。
いや、どこが変わった?どこと比べればいいの?と、もはや“間違い探しプロフェッショナル版”。
前のバージョンを自力で掘り出し、目視で比較…という無駄な作業が始まる。
結果、本質的な確認よりも“差分探し”に時間がかかり、チームの疲弊感だけが積み重なる。

ケース2:「指示なしPDFだけポン」

PDFを添付され「この方向でいきたいんですけど」と一言。開くと、赤字も注釈も一切ない、ただのレイアウト案。
「…で、どこをどう感じ取ればいいんでしょうか?」と心の中で問いながら、一応「何を意図されていますか?」と返信。だが返事は「え、見たらわかりません?」
なぜか、読み取れない側が悪いという空気になり、こちらの神経だけがすり減っていく。

ケース3:「社内イメージを共有せず丸投げ」

「社内では方向性決まってるので、この資料見てもらえれば」と送られてきたのは謎PDF。何が決まってて、どこを見て何を察すればいいのか全くわからない。
念のため確認のメールを入れると、「たぶん◯◯の感じ…いや、××だったかも?でも雰囲気で!」と、まさかの迷子ナビ回答。
結局、正解ルートに辿り着けず時間だけが過ぎる。修正対応を重ねるたびに信用スコアが下がっていく。

解説

「見ればわかる」とは、情報伝達における“責任の受け渡し”の拒否を意味します。
本来、見た情報から何を読み取ってほしいのか、どこに着目してほしいのかを明示するのが、やりとりの最低限のマナー。
しかし、「見ればわかる」という一言でそれを放棄してしまうと、受け取る側は“何が正しい読み取り方なのか”を自力で解釈するしかなくなります。

これは、単なる言い回しの問題ではなく、“伝える力”の欠如でもあります。

そもそも、私たちが作っているのは「情報をわかりやすく伝えるための制作物」。
そんな現場で、意図や背景すら言語化されないまま進行してしまうと、完成度や方向性にズレが生まれ、手戻りや誤解を招きやすくなります。

プロジェクトをスムーズに進めるためには、伝えるべき情報を的確に共有し合える環境づくりが欠かせません。
まずは、「伝える努力」をお互いに意識すること。
それだけでも、制作現場の混乱はかなり減らすことができます。

解決策

ファイルを見ても分からない前提で確認する

「念のためですが、どの箇所が修正されたか、簡単にご指示いただけますか?」など、説明をもらえる前提で動くのが鉄則。自力で判別せず、確認のひと言を入れるだけで無駄な作業や齟齬を減らせます。

Before/Afterをこちらで並べて確認する

説明がない場合でも、前回データと照合して違いを見つけやすくする工夫をこちらで行う。比較ビューワーやPDF差分表示ツールを活用するのも一手。あくまで「最終手段」として冷静に対処。

主観コメントにはすり合わせ前提で対応

「なんとなく違う気がする」など感覚的な指示には、「こういう意図と理解したのですが、合っていますか?」とこちらから意図の仮説を提示することで、ズレを早期に回避しやすくなります。

「説明がない=自力判断」で進めない意識を徹底

“見ればわかる”というスタンスに引きずられず、説明がない状態で動くこと自体がリスクだとチーム内でも共有。「判断できないことは無理に進めず、確認を取る」ことを徹底しましょう。

まとめ

「見ればわかる」は、言葉を省いたつもりでも、制作現場では誤解・齟齬・工数爆発の引き金になる危険なサイン。
相手の説明が不十分でも、こちら側の対応次第で被害を最小限に抑えることは可能です。

  • ・“理解できてないかもしれない”を前提に進める
  • 「説明不足前提」のフローを持つ
  • チーム内で“確認文化”を徹底する
  • 伝達精度が低い相手でも、想定内で動く心構えを

伝える力のない人とのやりとりは、理解のうえで立ち回る。それだけで、現場のストレスは一気に減り、成果物のクオリティも自然と上がります。

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