JIRAIZUKAN

PRODUCTION SIDE

制作サイドが踏む地雷

クライアントの技術理解不足による地雷:Trigger.02

「WordPress=自由自在」の都市伝説

「WordPressで作ったんだから、全部自分で自由に変えられると思ってた」 「ちょっとデザイン変えるくらい、こっちでできますよね?」

こんな言葉に戸惑ったこと、ありませんか?

WordPressはたしかに“更新しやすいCMS”ですが、それは「文章や画像の差し替え」「ニュースの追加」など、事前に設計された範囲の話。
デザインや構成の変更となれば、HTML・CSS・PHPなどの知識が必要で、場合によっては再設計レベルの作業が必要になることも。

にもかかわらず、「WordPress=全部簡単に変えられる」という誤解が独り歩きしがちです。
このギャップは、制作者とクライアントの間に不信や混乱を生み、余計なトラブルの火種になります。

今回は、この“WordPress万能説”の誤解とその対処法について掘り下げます。

ケーススタディ

ケース1:「ここのレイアウト変えたいんだけど、どこで設定できますか?」

ロックエディタやカスタムフィールドでは対応外の部分に対して、「管理画面からできるでしょ?」と問い合わせが…。実はテンプレート自体の修正が必要なケース。

ケース2:「マニュアル見たけど、分かりませんでした!」

更新方法を丁寧にマニュアル化しても、「見てない or 斜め読み」で「できない」と即ヘルプ要請。
対応する側は、毎回“口頭マニュアル”で説明に追われる羽目に。

ケース3:「バナーを差し替えたら、レイアウト崩れたんだけど?」

推奨サイズを無視して画像をアップ → デザイン崩壊。
「WordPressのせい」にされるけど、実は運用ミスというオチ。

解説

このようなトラブルの根底にあるのは、「更新できる」の意味の食い違いです。

制作側が言う「更新可能」は、“あらかじめ設定された編集項目”の範囲。
しかしクライアントは、“自分で全部なんとかなるツール”として認識してしまいがち。

この“運用と構築の境界線”が曖昧なままプロジェクトが進むと、
「できると思ってたのにできない」「聞いてたのと違う」といった誤解が次々と発生します。

さらに、営業やディレクターが「更新できます!」と軽く伝えてしまうケースも多く、
そのツケがすべて制作サイドに回ってくるという構造も少なくありません。

解決策

最初のヒアリングで「どこまで自分で更新したいか」を明確にする

更新箇所の要望を具体的に聞き出し、対応の範囲を整理。

「更新できる範囲」と「できない(専門知識が必要な)範囲」をドキュメント化

管理画面からできること/できないことを明文化し、共有。

デザイン変更や構造変更は“別途費用”であることを明示

見積もり時・納品時に、「後の変更には作業費が発生する」と伝える。

必要に応じて「運用マニュアル」や「編集ガイド」を納品

誤操作や思い込みによるトラブルを未然に防ぐ。

まとめ

「WordPressで作ってある=自由自在に変更できる」という誤解は、実はWeb制作の現場ではよくある“見えない地雷”のひとつです。

WordPressはたしかに便利で柔軟なCMSですが、あらかじめ設計されたルールの中でこそ力を発揮します。
そこを超えて「好きに変えたい」「自由にデザインしたい」となると、それはもう“運用”ではなく“再構築”の領域。

にもかかわらず、「CMSって全部自分で触れるんでしょ?」「ちょっとしたデザイン変更なら更新のうちでしょ?」そんな無邪気な思い込みが、やがてトラブルや不満へと変わっていきます。

この背景には、制作サイドとクライアント側との技術認識のズレがあります。
そしてしばしば、営業やディレクターが“伝え方”を曖昧にしてしまうことで、「言った・聞いてない」のすれ違いが起き、
最終的にすべてのしわ寄せが制作に降りかかる…という構図も無視できません。

だからこそ大切なのは、「更新できる」とはどういうことか?
その意味を、言葉で・仕様で・ルールで、きちんとすり合わせることです。

  • ・自分でできる範囲
  • ・専門知識が必要な範囲
  • ・対応には別途費用がかかる範囲

この3つを明確に分けて伝えることで、無用な混乱や負担を避けることができ、クライアントとの信頼関係も長く保てるようになります。
便利なツールほど、誤解も生まれやすい。
だからこそ“丁寧な説明”と“誠実な設計”が、これからの制作現場には必要不可欠です。

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