JIRAIZUKAN

PRODUCTION SIDE

制作サイドが踏む地雷

クライアントの技術理解不足による地雷:Trigger.05

なんでも簡単に作れる世界に僕らはいない!

「このボタン押したらメールが送れるようにして」「画像をパッと動かしたいんだけど」
そんなリクエストが、まるで“買い物リスト”のようにポンと届くこと、ありませんか?

言葉だけを見ると、たしかに「ちょっとしたこと」に見えるかもしれない。
でも、Web制作の現場では、それぞれが設計・開発・検証・運用の工程を必要とする“ひと仕事”。

「なんでそんなに時間かかるの?」と言われるたびに思うのです。
僕らは、なんでも一瞬で魔法のように作れる世界には生きてない――と。

今回は、“簡単そうに見える”機能追加リクエストの裏側にある開発の現実と、誤解をどう解いていくかを紐解きます。

ケーススタディ

ケース1:「このボタン、押したら自動でお知らせメール飛ばしてよ」

UIは1つ。でも裏では「誰に」「どんなタイミングで」「どんな文面で」という設計が必要。
メールサーバーの設定や検証も含めると、ちょっとどころかがっつり開発案件。

ケース2:「画像、フワッと出てくる感じで動かせない?」

CSSで動く?JSが必要?どのブラウザ対応?SP表示は?
“軽やかな見せ方”ほど、テストと調整が必要なジレンマ。

ケース3:「このPDF、フォームに入力した内容で自動生成して出してほしい」

入力データの取得・PDFレイアウト調整・ファイル出力・セキュリティ設定…
実は業務アプリ開発レベルの作業量になることも。

解説

「ちょっと動かすだけ」「自動で送るだけ」この“だけ”の感覚が、地雷の温床。
その裏には、開発工数の存在やシステム全体の連動性への無理解があります。

特に怖いのが、「じゃあ入れといて」と軽く言われたことで、ディレクターや営業が「即OK」してしまい、制作サイドにしわ寄せが来る構図。

この“気軽な開発依頼”が繰り返されると…

  • ・スケジュールが逼迫し、別案件に影響が出る
  • ・クオリティを保つための確認工程が削られる
  • ・何より、「無料でやってくれる」という誤解が定着してしまう

本来、開発という行為には設計・構築・テスト・実装・運用すべての工数が存在します。
「簡単そうに見える」=「簡単にできる」ではないということを、丁寧に伝えていく必要があります。

解決策

開発依頼=有償対応を明確に伝える

「ボタン1つ」「画像1つ」でも設計と実装の工程があるため、別途費用がかかることを初期段階から伝えておく。

追加機能は“業務設計”レベルであることを説明

「誰が、いつ、どう使うか」を明確にしないと、仕様バグや誤作動につながる可能性を共有。

機能の“目的”をヒアリングし、必要な仕様に再設計する

「なぜこの機能が必要なのか?」を確認し、より適切な方法を一緒に考えるプロの姿勢を示す。

「簡単そうに見える」=「難しいかもしれない」と意識づける

クライアントに“裏側のプロセス”を少しでも理解してもらえるよう、ビジュアルや例え話を活用。

まとめ

「これくらい、簡単にできるでしょ?」
その一言に、どれだけの“すれ違い”が含まれているかを、僕たちは日々、身をもって知っています。

Web制作の現場では、ひとつの機能や動きに対して「設計 → 実装 → テスト → 修正 → 本番対応」というプロセスが必ず存在し、それぞれに時間とリスクが伴います。
それでも、“画面上の見た目”はあまり変わらない。だからこそ、そこに費やされた努力や技術が見えにくいのです。

そして、クライアント側も「気軽に言ったつもり」が、制作サイドにとっては想定外の労力や責任を発生させることも。
「無料でやってくれるんだよね?」「ちょっとの修正だからすぐ終わるでしょ?」その“ちょっと”がいくつも重なり、納期も現場も圧迫されていきます。

そんな構造的なズレを防ぐために、僕たちができることは

  • ・ 技術には対価があることをしっかりと伝えること
  • ・簡単に見えるものほど、実は設計が重要であることをわかりやすく共有すること
  • ・そして、制作を「魔法」ではなく「職人の仕事」として、きちんと価値あるものとして理解してもらう努力を続けること

「なんでも簡単に作れる世界に僕らはいない」
だからこそ、伝え方と姿勢を大切にしながら、制作の価値を守っていく。
それは、現場の自分たちだけではなく、クライアントのビジネスの未来を守ることにもつながっているのです。

Loading spinner