MANAGEMENT SIDE
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「デザイン経験10年」「広告・グラフィック出身」「WEB案件も多数対応可」
そんな謳い文句を信じて外注したのに、上がってきたデザインはどこかズレてる。サイズ感、余白、視線誘導、CTAの設置、UI上の導線。すべてが“WEBっぽく見えるだけ”で、本質がまったく理解されていない。しかも、デザイナー本人は自信満々で、改善の提案にもピンときていない様子。
営業としては「これ、クライアントに出せない…」と毎回差し戻すことになり、結局、社内で全修正する羽目に。
こうした“紙のノリで作られたWEBデザイン”は、一見それっぽく見えるが、実際はユーザーにもクライアントにも刺さらず、現場を疲弊させるだけなのです。
LP制作を依頼したら、ファーストビューが全面イメージ+小さなロゴと謎のキャッチコピー。スクロールしないとメニューもCTAも出てこない。
「できました!」というけれど、情報設計はゼロ。ユーザー導線も無視。営業が「これ、何のサイトかすら伝わらない」と真顔で全修正。
スマホ対応もセットで依頼したのに、提出されたのはPC用デザイン1パターンのみ。SPの想定すらなく、レスポンシブの考慮はゼロ。
「とりあえずデザインしておきました」と渡されたが、実装は完全に手詰まり。営業が「これ、どう動かす前提で作ったの?」と詰め寄るも反応は薄く、最終的に構造から社内で作り直すことに。
SNS広告用バナーを依頼。「若者向けで!」とお願いしたら、某ブランドのデザインそっくりのパクリ風ビジュアルで納品。
「今っぽく仕上げました!」とテンション高く提出されたが、著作権グレーすぎてクライアントからNG。信頼失墜の危機に。
グラフィックとWEBは似て非なるものです。紙媒体では「見せ方」重視でも成り立ちますが、WEBは「使われてなんぼ」。
にもかかわらず、「見た目が整っていればOK」という紙の常識をそのまま持ち込む外注先に当たってしまうと、成果物は“WEB風のグラフィック”止まりになります。
さらに厄介なのは、発注側が「プロだと思って依頼している」こと。
しかし蓋を開けてみると、出てくるのは構造設計が不在の“見た目だけ”のデザイン。情報の優先順位も導線設計もなく、「とりあえず見栄えを整えただけ」で終わっていることが多く、実装段階では不備だらけ。
本人に悪気はなく「いい感じにできた」と思っているからこそ、根本的な認識のズレが解消されないまま進行が止まってしまうのです。
グラフィック実績だけで判断せず、WEB案件での成果物を必ず確認。
「UI構造の理解があるか」「レスポンシブ設計の経験があるか」「目的設計から関わった実績があるか」など、工程理解の深さを重視する。
「LPの目的は○○」「このCTAに誘導したい」など、構造や導線設計を優先したブリーフィングを行う。
デザインを依頼する前に“設計図がない”と分かったら、その時点で「今回は依頼を見送る」という判断も選択肢に。
グラフィックデザイナーの中にはワイヤー設計のスキルがない人も多く、「どこに何を配置するか」「何を優先すべきか」の判断ができないことも。
その場合は、依頼側で構成を仮組みして渡すか、そもそも構造設計からできるパートナーに切り替える必要がある。
「グラフィック出身だからって、WEBデザインもできるとは限らない」
これは現場で何度も痛感してきた“事実”です。見た目が整っていても、使えないUI・導線不在の構成では、それは“作品”でしかなく、“成果物”にはなりません。
営業・ディレクターとしては、出てきたデザインに対し「これ、クライアントに出して大丈夫か?」と何度も自問し、時には全修正の覚悟で向き合わざるを得ない。
だからこそ、「目的設計の視点を持っているか」「構造を考える力があるか」は、見た目以上に重視されるべきスキルです。
最初から「グラフィック寄りの人には頼まない」という判断も、現場を守るためには立派な戦略。“WEBっぽい”だけの見た目に騙されず、「ちゃんと使えるか」で判断する目を持つことが、結果的にクライアントとチームの信頼を守ることにつながるのです。