MANAGEMENT SIDE
MANAGEMENT SIDE
「ちゃんとやっておきました!」という言葉に安心していたのに、いざフタを開けてみれば、UIはガタガタ、テキストは仮のまま、対応完了チェックすら形だけ、でも当人はドヤ顔。
そんな“ズレた基準”のまま作業が進められ、納期直前で営業やディレクターが慌てて火消しに走る現場は珍しくなくて、しかも厄介なのは本人に悪気がないどころか「むしろこれ以上何を求めるんですか?」という態度すら見えるあたりに根深い地雷臭が漂っていて、その一言一言にこっちの血圧は上がりっぱなしになるのに、温度感を丁寧に揃える仕組みがない限り、この手の「ちゃんとやったつもり」のズレは何度でも繰り返されるのです。
仮デザイン段階とはいえ、UIの整列が崩れていたり、明らかに不完全な状態で「一旦確認お願いします」と提出。
営業が「これ、クライアントに出せない…」と全修正。
デザイナーは「まだ仮なんで」と気軽に言ったが、営業にとっては「最初の印象がすべて」だった。
「OK」と対応表に書いてあるのに、PCブラウザ以外での確認はゼロ。
SP表示は崩れまくり、指示通りになっていない箇所も多数。
「自分の環境では動いてましたけど?」と悪気ない反応に、進行側は放心状態。
制作チームの成果物に明らかな粗があったにもかかわらず、「まぁこのぐらいは大丈夫だろう」とそのままクライアント提出。「うちはこの品質では通せません」とフィードバックが返り、信頼を失って案件が縮小。
温度感のすり合わせを怠った代償は大きかった。
この問題の厄介さは、関わった本人たちが「ちゃんとやった」と本気で信じているところにあります。彼らにとっての“ちゃんと”は、自分の中での基準であり、誰かの期待や状況までは考慮されていない。だからこそ、そのまま納品されると、確認作業のすべてを営業・ディレクターが背負う羽目になる。
特に多いのが、「チェックしたつもり」なのに肝心な確認が抜けているケース。ブラウザチェックがChromeだけ、原稿との照合は未実施、ガイドライン未確認、指示と違うけど本人は気づいてない。
しかも、「問題ないと思ってたんですけど…」の一言で済まされてしまう。
でも実際のところ、こういったチェック漏れの最大要因は、その人の性格や姿勢によることが多い。慎重さに欠ける、確認を面倒だと思っている、細かい部分に注意が向かない。
そうした“個人の傾向”がクオリティのばらつきとして現れ、後工程を爆発させていくのです。
「この資料は仮だけど、ある程度整った状態で出してね」「ラフだけどクライアントにはそのまま渡るよ」など、どのレベル感を求めているかを明示。
“どこまで丁寧にやるか”を曖昧にしない。
・ブラウザ・デバイスチェックを複数環境で行ったか?
・指示書や原稿と整合が取れているか?
・クライアント要望の意図を踏まえているか?
など、確認の粒度を明文化したチェックリストを作るだけで、仕上がりは激変します。
自己判断ではなく、相手の目線を仰ぐことを習慣化する。
ちょっとした確認が、10倍の修正作業を防ぐ。
「終わった」ではなく「確認してもらった」で初めて“完了”と認識する意識改革を。
「このぐらいでいいと思ったんですけど」
その一言に潜むのは、確認不足や責任転嫁だけではありません。
相手の期待に想像を巡らせる優しさの欠如でもあるのです。
例えば、「この指示ってこういう意味だったのかな?」と一歩踏み込んで確認してくれるだけで、「この実装、本当に問題なかった?」と自問してくれるだけで、プロジェクトの空気は格段に変わります。
私たちは常に、クライアントの顔色を見ながら、最後の砦として成果物を確認し、ミスを拾い、指摘し、時には全部やり直す。
そんな苦労の一部が、「少しだけ相手を気遣う」気持ちで解消できるなら、その優しさは何よりも価値のあるスキルです。
“確認する”は、作業ではなくチームへの思いやり。
“ちゃんとやる”は、独りよがりではなく信頼の積み重ね。
その意識が揃えば、もう「このぐらいでいいでしょ?」なんて、誰も言わなくなります。