MANAGEMENT SIDE
MANAGEMENT SIDE
「ちょっとだけ直してもらえますか?」の一言に対し、「それ、意味あります?」「こっちの方がよくないですか?」と、微妙なトーンで返してくる。こちらはごく普通の調整をお願いしただけなのに、なぜか相手の表情は曇り、作業スピードは鈍化。場合によっては「そっちの説明が悪い」「先に言ってくれればよかった」と、まるでこちらが悪いかのような空気を出される。
クライアントと制作の間に立つ営業・ディレクターにとって、こうした“修正を嫌がる人”との仕事は、説明や配慮に何倍ものエネルギーを使う地味で深いストレス源だ。しかも本人は「あたり前のこと言ってるだけ」と無自覚で、火種はくすぶり続ける。
バナーのトーンを少し落として欲しいと依頼しただけなのに、「理由を明確にしてください」「元の方が良くないですか?」と詰問モードに。
営業としては「いや、こっちはクライアントの要望を伝えてるだけで…」という状態なのに、会話は噛み合わず、空気はピリつくばかり。
「この文、少し柔らかくできますか?」と軽く頼んだだけなのに、「言われた通りにやってるんですけど!?」と逆ギレ気味に反論。
最終的に修正はしてくれたが、以降のやりとりがギクシャクし、ちょっとした追加依頼すらしづらくなってしまった。
構成を踏まえての微調整をお願いすると、「じゃあ最初からそう言ってくださいよ」と、責任をこっちに押しつける言動。
営業がクライアントの意向を吸い上げて都度対応している構造を理解しておらず、共同作業の意味を履き違えている典型例だった。
修正依頼を“自分の否定”と受け止めてしまう人に共通するのは、「完璧なものを出したつもりだったのに」と思い込んでいること。
だが実務において、最初から100点のアウトプットが求められているわけではないし、修正はプロセスの一部。
むしろ「直す前提」で動いているからこそ、営業もクライアントも意見を出せるわけで、それを感情で跳ね返されると、関係性も進行も一気に冷えてしまう。
また、このタイプは「言われたことはやるけど、追加で言われると不満」という、極端な“受け身スタンス”になりがち。
そうなると依頼側としても「これ言ったらまた空気悪くなるかな…」と、指示出しにブレーキがかかり、結果的にクオリティの低下を招く。
制作物はチームで磨くものであって、ひとりのプライドで守るものではない。それを勘違いしていると、共同作業は成立しない。
制作者が「自分で完了を決めない」ことが大前提。
営業やクライアントからの確認が入って初めて“終わり”とすることで、途中修正を自然なものと捉える文化をつくる。
「この表現、もう少し柔らかくすると女性層に伝わりやすいそうです」など、依頼の裏にある意図を伝えるだけで反発は減る。
“誰のために直すのか”が明確になれば、「言われたから仕方なく」ではなく、「なるほど」と納得感が生まれる。
小さな修正に不満を持ちがちな人は、実務より“自分の作品”を重視する傾向が強い。
過去のやりとりで「修正時に空気が悪くなる」「言い訳が多い」と感じたなら、最初から依頼しない決断もまた重要。
ストレスの少ない現場は、最初の人選から始まっている。
「これ、直す必要あるんですか?」
その一言で、現場の空気が一気に凍りつく。そんな経験を持つ営業やディレクターは少なくありません。
こちらとしては、クライアントの意図を汲んで伝えているだけ。修正も“よりよくするため”のごく当たり前のプロセスです。
けれども、まるで自分が否定されたかのように受け止めて、むっとされたり、理由を詰められたり、やる気をなくされたりすると、伝え手としての立場が一気に苦しくなる。クライアントの要望を伝えることすら怖くなり、「これ、本人に伝えて大丈夫かな…」と悩むようになります。
制作物は“作品”ではなく“成果物”。
関係者全員が“どう仕上げるか”に向き合っている中で、自分の感情を優先してしまう人がひとりでもいると、プロジェクト全体の熱量が崩れます。
最終的に「じゃあもう他の人にお願いしようか」となってしまうのは、腕の良し悪し以前に、“一緒に仕事ができる人かどうか”が判断基準になるからです。
直しは敵じゃない。クオリティを磨くチャンスであり、信頼を積み重ねる場でもあります。
「なるほど、それならこうしてみましょうか」
その一言があるだけで、やりとりの空気は柔らかくなり、クライアントも「この人、ちゃんと向き合ってくれてるな」と思える。
だからこそ、修正依頼にどう向き合うかが、“プロかどうか”を分ける一番シンプルな分岐点なのかもしれません。