MANAGEMENT SIDE
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「できるだけ早めに」「急ぎでお願いしたい」
制作現場ではよく聞くワードですが、それを受け取る側の温度感が違うと、とたんに現場は混乱します。
営業やディレクターは、クライアントとの打ち合わせから逆算してスケジュールを組み、各所への確認や修正の工程も見越して動いています。
しかし、“自分のペース第一”の制作者は、その全体像に想像力が及ばない。言われた納期“当日”に、ギリギリで提出。確認・修正を挟む余裕などお構いなしに、「間に合ったからOKでしょ?」とばかりに納品する。
そんな温度差が、信頼とスピード感を命とする制作現場では致命的です。
修正を前提としたデザイン初稿を「納期の2日前」に受け取る予定だったが、実際に届いたのは“納期当日の17時”。確認すると明らかな修正箇所が複数あり、当日中のリカバリーは不可能。
結果的に納期遅れとなり、クライアントには謝罪対応とスケジュール調整のために、営業・ディレクター側が深夜まで動く羽目に。
クライアントから急なプロモーション変更が入り、「今日中に対応できないか」と制作者に相談。
しかし返ってきたのは「今日は無理です。明日やります」と一言だけ。
納期の重みやチームの状況、クライアントの焦りをまったく理解しておらず、その一言で信頼の積み上げチャンスを失った。
あらかじめ伝えていた「◯日納品」の期日になっても音沙汰なし。
こちらから催促してようやくデータが送られてくるが、納品時間は“当日の夜”。
クオリティチェックの時間がなく、社内でろくに確認もできないままクライアントに提出する事態に。
このタイプの制作者に共通しているのは、「納品=提出した瞬間に自分の仕事は終わり」と捉えている点です。その感覚は“納品の重み”をまったく理解していない証拠であり、プロジェクト全体を「点」でしか見ていない状態です。
制作現場では、「納品物が完成した日=確認と調整がスタートする日」であることがほとんどです。営業やディレクターは、その“余白”を見越してスケジュールを組み、何かトラブルが起きても即座に対応できるよう、バッファを設けています。
そのバッファを潰されることは、現場の命綱を切られるのと同じ。
ギリギリ納品は、見た目には“間に合ってる”ようで、実際には「修正の時間を削る」という形でクオリティに皺寄せがいっているのです。
さらに、こうした人材は進捗報告もおろそかで、途中経過を見せずに“いきなり完成品”を提出してくることも多い。このスタイルでは、初期段階でのズレや修正点を見つける機会が奪われ、結果的に大きな手戻りやトラブルにつながりかねません。
これは単なる納品の遅れではなく、「チームのリズムを乱す行為」であり、組織全体の信頼と生産性に関わる問題です。
「◯日納品」だけでなく、「午前中に初稿→午後に社内チェック→翌日最終提出」という具体的な流れで伝えることで、“提出=終了”という誤解を防ぐ。
完成品を突然出すのではなく、「ラフ段階」や「ワイヤー」「仮デザイン」など、段階的に提出させる仕組みを構築。修正の精度とスピードが格段に上がる。
チームとして信頼を勝ち取るには、スピードと正確さの両立が必要。「急ぎに対応することで、営業がどれだけ助かり、信頼が高まるか」まで伝える。
どれだけ技術が高くても、納期感覚にズレがある人には、短納期・高プレッシャーのタスクは任せない判断も必要。
「自分の作業が終わったら、それでOK」そんな感覚で動く制作者は、どんなにスキルがあってもチームの足を引っ張ります。納期というのは、営業やディレクターにとって“仕事のゴール”ではなく、“信頼を守るための起点”。その意識を共有できない人材は、いくら優秀でも現場では扱いづらく、最終的にはリスクとなります。
制作現場は“協力プレイ”であり、“納品”はパスのタイミングそのもの。
チームが同じゴールに向かって動くためには、「どのタイミングで、どんな品質のものを出せば次の工程がスムーズか」を考える視点が欠かせません。
「間に合えばいい」という自己完結の仕事ぶりは、信頼の連鎖を断ち切る行為。一緒に仕事をするうえで“温度差”は最大のストレスになります。
納期の感覚こそが、その人の“現場力”と“責任感”を如実に表すのです。