MANAGEMENT SIDE
MANAGEMENT SIDE
制作現場では、急な差し込み対応や想定外の修正が発生するのは日常茶飯事。
それは、営業やディレクターが怠慢だからではなく、クライアント都合やトラブル回避のための“現場のリアル”であり、全体の信用や進行の安全を守るための判断でもあります。
しかしそんな状況下でも、「今はちょっと予定詰まってて無理です」「急ぎって言われても無理なもんは無理です」と、自分のスケジュールを絶対に曲げない人がいます。まるで“自分だけが仕事をしている”かのように、チームの都合もクライアントの事情も他人事。
そんな人と仕事をしていると、「もうこの人に頼むの怖いな」と感じてしまうのは当然で、結果として“急ぎ対応できる人”だけに負担が偏る悪循環を生みます。
クライアント都合で緊急対応が必要になり、朝イチで「今日中にお願いできる?」と依頼したところ、「予定詰まってるんで無理っす」と即断。代わりに対応したのは、別のタスクを抱えたスタッフ。「この人には頼れない」と分かった瞬間の絶望感がすべてを物語っていた。
納品直前の段階で、確認用データに不備が見つかり、18時すぎに修正依頼。すると「今日はもう帰ります、また明日で」とクールな反応。結果、修正は翌日回しになり、クライアントからは「急ぎって言ったのに…」と不信の声。
特に多忙ではないのに「急ぎ案件はトラブルの元になるので」と、ポリシー的に断固拒否。もちろんその姿勢は理解できる部分もあるが、事情を聞く前から一切協力しないその態度に、チームの士気は徐々に低下していった。
この問題の本質は、「急ぎ対応=特別な負担」ではなく「信頼構築の大事なチャンス」だという意識が欠けている点にあります。
営業やディレクターは、ただ無茶ぶりをしているわけではありません。クライアントとの信頼関係やプロジェクトの流れを守るために、「ここが正念場だ」と判断しているケースがほとんどです。
そこで「いや無理なんで」とバッサリ切られると、現場は完全に詰みます。しかも、断る本人は悪気すらないため、議論の余地すらなく、ただ他メンバーにシワ寄せがくる構図が出来上がってしまうのです。
しかも、こういった人材に限って「修正依頼が多い」「指摘が細かい」といった不満を漏らすこともあり、現場の空気は悪化しがち。
“作業に対する責任感のなさ”が如実に現れる典型的な例といえます。
誰かの段取りミスではなく、“クライアント都合や信頼維持”のためのイレギュラー対応であることを普段から伝えておく。想定される急ぎパターンを洗い出し、対応の優先度と方針を事前に共有するだけでも温度差は減ります。
「急ぎは無理」ではなく、「◯時以降ならできます」「ここを調整すれば対応可能です」など、条件付きの前向きな返答ができるだけで印象は大きく変わる。そうした“協力的な姿勢”が信頼に直結します。
全員が100%の無理をする必要はありません。でも、「困ったときに助けてくれる人」が報われる文化があれば、自己都合優先の姿勢は自然と淘汰されます。“スキルより姿勢”を評価軸に加える仕組みを。
急ぎ対応は、誰かのせいではなく“現場が試されるタイミング”です。
その時、「無理っす」「今日は定時で帰ります」とだけ返す人がいると、チームは一瞬で不安に包まれます。一方で、「今ちょっと詰まってますが、1時間後なら動けそうです」「これ終わらせたら着手しますね」と言ってくれる人がいるだけで、進行側はどれだけ救われることか。
自分を守る姿勢も必要です。ただ、それが“相手を見捨てる”行為に見えてしまった瞬間、信頼は一気に崩れます。「急ぎ=ただの迷惑」ではなく、「信頼を築くチャンス」と捉えられる人が、結局は長く現場に残っていく。
仕事の評価はスキルだけじゃない。チームのためにどう動けるかそこに本当のプロ意識が問われているのです。