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CLIENT SIDE

クライアントが踏む地雷

営業トークだけ達者系地雷:Trigger.03

プレゼンだけ超一流、本番は素人レベル

初回の打ち合わせや提案資料は、まさに完璧。洗練されたデザインサンプル、戦略性を感じさせるマーケティング視点、プレゼン担当の話しぶりも堂々たるもの。クライアントは「この会社なら安心して任せられる」と感じ、正式に契約。

しかし、プロジェクトが進行するにつれ、納品物は荒削り、対応も遅い。最初に感じた“安心感”はどこへ?これは、プレゼン力だけが高い会社・担当者にありがちな「見せプレ詐欺」の典型パターンです。

「営業だけがプロフェッショナル」で、制作実務が完全に素人レベルというケースも、実はかなり多く見受けられます。

ケーススタディ

ケース1:トップデザイナーが提案 → 実制作は見習いが担当

プレゼンに登場したのは、業界歴も長く実績豊富なデザイナー。しかし、実際の制作担当は新人スタッフ。全体のバランスも悪く、明らかにスキル不足。クオリティ差に愕然としたが、もう契約後だった。

ケース2:「社内制作」と言っていたが、実は外注フル活用

提案時には「すべて自社制作なので安心です」と説明されていたが、実際にはほぼ外注任せ。品質もバラバラで指示が通っていない。社内にクリエイティブ管理の体制もなく、トラブルの連続。

ケース3:実績紹介が過去の栄光ばかりだった

提示された事例がどれも素晴らしく、信頼して発注。しかし、後から聞いた話では「そのデザイナーはもう退職した元社員のもの」。現在の制作チームでは同じ水準がまったく再現できないことが判明。

解説

このような事例が後を絶たないのは、「営業・提案段階の魅せ方」と「実務の現場力」にギャップがある会社や代理店が多いためです。特に広告代理店や中間マージンをとる制作会社では、営業力・資料作成力には長けているが、実際の制作は下請けやフリーランス任せという構造が珍しくありません。

また、プレゼンではプロ中のプロが登場するのに、実際の制作には関わらない「出オチパターン」も横行しています。クライアントとしては、「あの人が担当してくれる」という前提で契約したのに、プロジェクトが始まると一切関わらないという裏切られた気持ちになることもあるでしょう。

プレゼンで“良い印象”を受けたからといって、制作体制や担当メンバーを確認せずに進めるのは非常に危険です。魅せ方だけが上手い会社には、“作る力”が備わっていないことも多い。そのギャップに気づいた時には、もう予算も時間も動き出していて手遅れということが少なくありません。

解決策

「誰が作るのか」を明確にさせる

提案内容や資料の出来栄えだけでなく、「このプロジェクトには誰が関わり、誰が実際に手を動かすのか」を事前に確認することが重要です。できれば実制作スタッフの名前・役割・過去実績を開示してもらい、提案者とのスキル差がないかをチェックしましょう。

制作体制とフローの明文化を求める

営業やプレゼン担当の話だけを鵜呑みにせず、契約前に制作体制・役割分担・確認フローをドキュメントで提示してもらうこと。その書類があるだけで、責任の所在や作業の透明性が一気に上がります。文書に残せない場合は「実態がグレー」な証拠と考えた方がいいでしょう。

プレゼン資料の“実制作者”に登場してもらう

プレゼンのクオリティに感動した場合ほど、その資料を「誰が作ったのか?」を確認することが重要です。可能であれば、提案者だけでなく制作責任者やデザイナーも同席させ、リアルなやりとりを交えた場を設けると、実務者の温度感や力量が見えてきます。

まとめ

どれだけ素晴らしい提案書やプレゼンを見せられても、それはあくまで「入り口」に過ぎません。本当に大事なのは、“その提案通りに進められる体制があるか”“その品質を担保する人材がいるか”という点です。

プレゼンだけで判断してしまうと、後に「まったく別の会社に頼んだような結果になる」ことも多々あります。クライアントはプロの提案を期待してお金を払うのですから、その裏切りは予算以上に精神的ダメージが大きいものです。

このような失敗を回避するためには、見た目や言葉に惑わされず、「実際に誰が関わるか」「その人のスキル・実績はあるか」という現実を冷静に確認する目が必要です。最初の印象だけに頼らず、継続的に信頼できるパートナー選びを心がけましょう。見せプレゼンに振り回される時代は、もう終わりにしたいものです。

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