JIRAIZUKAN

CLIENT SIDE

クライアントが踏む地雷

営業トークだけ達者系地雷:Trigger.02

打ち合わせでは愛想抜群、納品は別人レベル

最初の打ち合わせに現れたのは、感じも良く 話も上手なディレクター。

こちらの要望にも丁寧にうなずき、「それ、いいですね!」「うちでも実績あります!」と手応えあるやりとり。ところが、実際に上がってきたデザインやコーディングを見て驚愕。
「え?このクオリティで本当にプロなの?」と目を疑いたくなるほど。

よくよく聞けば、その場にいた人物は“担当ディレクター”ではなく“営業担当”。実制作には一切関わらない存在だった。この「プレゼンは良かったのに実際は…」というギャップに悩まされる企業は後を絶ちません。

ケーススタディ

ケース1:「この人がやってくれると思ってたのに…」

初回打ち合わせで出てきたディレクターは業界歴も長く、話しぶりも洗練されていて安心感があった。しかし、実際にやりとりするのは若手スタッフで、質問のレスも遅く、仕上がりの品質にも統一感がない。途中で「◯◯さんにはもう関わってないんです」と言われ呆然。

ケース2:発注後に連絡がつかなくなった“プレゼン担当者”

提案時の説明や資料が非常に分かりやすく、その場にいた人物に信頼感を抱いて発注を決定。ところが、契約以降は完全にフェードアウト。制作に入っても音沙汰がなく、他のスタッフが「聞いてません、それ」と言い始める始末。

ケース3:「見せてもらった実績と全然違う!」

プレゼンでは過去の実績を丁寧に紹介され、同様のクオリティを期待して発注。しかし、納品されたものはテンプレのような粗いデザイン。問い合わせると、「実績はグループ会社のもので、今回は社内の別チームが担当しています」と事後説明された。

解説

こうしたトラブルの根底には、“営業・プレゼン担当と制作担当の断絶”があります。プレゼンや初回打ち合わせには、対外的な印象を重視してベテランやコミュニケーション能力に長けた人物が出てくることが多く、クライアントとしては「この人が担当してくれる」と思いがち。
しかし、制作が始まると実際の進行役はまったく別の人物にすり替わる。「最初の人はただの顔出し要員」「制作チームは別会社」といったケースも珍しくありません。

特に制作工程で大切なのは「実務レベルで話が通じる人とやりとりできるかどうか」。プレゼンがどれだけ完璧でも、その後の実働が噛み合わなければプロジェクトは進まず、クオリティも保証されません。

さらに問題なのは、このギャップが意図的に隠されているケースがあること。あえて制作体制を曖昧にして「安心感だけで契約させる」という営業手法は、短期的には受注に成功しても、長期的には信用を大きく失うリスクをはらんでいます。

解決策

「誰が最後まで関わるのか」を明確にする

打ち合わせに来た人物が「実制作に関わるのか」「担当として最後まで責任を持つのか」を、最初の段階で明言してもらいましょう。「この人は説明だけの人だったのか」と後でならないよう、担当範囲を確認するのが必須です。

制作チームの実績・顔ぶれも確認

過去実績や紹介されたポートフォリオが「今回の担当チームによるものか」を確認しましょう。別会社や外注に丸投げされている場合、そのギャップが品質や納期のトラブルにつながるリスクがあります。

納品前に“中間成果物”のチェックを複数回設定

初稿が納品されるまで何も確認できない体制は危険です。途中経過を確認するレビュータイミングを明確に設けて、制作の進捗とクオリティを早い段階で把握しましょう。出オチ回避には「途中で方向修正できる余地」が重要です。

まとめ

「最初に出てきた人が一番まともだった」これは多くのクライアントが経験する“制作あるある”です。営業や初回の打ち合わせでは信頼感のあるベテランが出てくるため、「この人が担当してくれるなら安心」と思って発注を決めてしまうのも無理はありません。

しかし、蓋を開けてみると制作は全く別のチームや外注先に丸投げされ、納品物のクオリティが最初に見せられた実績とかけ離れている。連絡のテンポも遅く、進行も不安定。そのギャップに気づいた時には、すでにプロジェクトが半分以上進行していた…ということも少なくありません。

このような“出オチ営業”を回避するためには、見た目の印象ではなく、誰がプロジェクトに責任を持ち、どのような体制で動くのかを事前に確認することが絶対条件です。特に、制作フェーズに入ってからのやりとりはストレスが蓄積されやすく、後から「思ってたのと違う」と感じても手遅れになることが多いのが現実。

大切なのは、プレゼンや資料の完成度ではなく、“実際の仕事ぶりと継続力”。そして「この人なら最後まで一緒に走り切れる」と思える体制かどうかです。クオリティ・納期・信頼のすべてを担保するのは、最初の印象ではなく、日々の積み重ねと誠実な進行体制。その見極めが、プロジェクト成功への鍵となります。

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