PRODUCTION SIDE
PRODUCTION SIDE
「ひとまずデザインだけ進めておいて! 内容はあとで考えるから!」
この一言に、デザイナーの脳裏をよぎる不安と違和感。
デザインは単なる飾りではなく、伝えたい内容を整理し、効果的に伝達するための手段。コンテンツが決まっていないのにデザインを進めることは、地図なしで旅に出るようなもの。後になって「このスペースにこれを入れて」と言われれば、デザインのバランスが崩れ、最悪の場合、全体を作り直すことにもなりかねない。
では、なぜこのような事態が発生するのか? どんなリスクが潜んでいるのか? 具体的なケースを見ながら解説していこう。
ワイヤーフレームにダミーテキストを配置してデザインを進めていたところ、本番テキストが届くと、なんと想定の3倍の文量。しかも改行の位置がデザインと噛み合わず、レイアウトの修正が必須に。そこで「デザインに合わせて文章を調整してもらえませんか?」と相談するも、「この内容は削れません」とバッサリ拒否。結果、全体のデザインを一から調整することになり、大幅な工数ロスに。
デザイン段階で画像比率のすり合わせをせず進めていたところ、後から「この写真を使ってください」と送られてきたのは、レイアウトに全く合わないサイズ感の画像。しかも「絶対にトリミングはしないで使ってください」との要望付き。結果、全体のデザインを根本から見直すことに。手戻りが発生し、予定外の工数がかさむ。
「まずはシンプルな構成でいきましょう」と合意してスタートしたのに、納品間際になって「この情報も入れてほしい」「このサービスも追加で」など、次々と新要素が追加されていく。各情報の優先順位も整理されないまま詰め込まれるため、ページ全体がゴチャつき、統一感のない仕上がりに。結果、デザインもUXも崩れ、見づらいサイトになってしまった。
「あとで中身を決める」という考え方が危険なのは、デザインの本質を軽視している点にある。
デザインとは、テキストや画像などのコンテンツと一体になってはじめて機能するもの。内容が決まっていない状態でデザインを進めると、後から情報を詰め込む形になり、以下のような問題が発生しやすい。
最悪の場合、プロジェクト全体の進行に影響を及ぼし、納期遅延や追加コストの発生につながる。
「デザイン前にテキスト・画像を確定させる」というルールを明文化し、プロジェクトの進行に組み込む。最低限、ページごとの要素や文字数の目安は決めてもらう。
デザイン作業に入る前に、ワイヤーフレーム(構成図)を作成し、どこにどんな情報が入るのかを事前に確認してもらう。
「デザイン後の大幅な変更は追加費用が発生する」ことを契約段階で明記し、不要な手戻りを減らす。
クライアントがコンテンツを準備するのが難しい場合は、コピーライティングや撮影やフォトライセンスを提案し、制作をスムーズに進める。
「あとで中身を決めるから、デザインを先に進めてほしい」という依頼は、一見スピーディーに進行できるように思えるが、実際には後から手戻りが発生し、プロジェクト全体の非効率につながる。
デザインはあくまで「情報を効果的に伝えるための手段」。コンテンツの準備を後回しにすると、見た目だけのデザインになり、最終的にクオリティの低下を招く
このポイントを徹底することで、無駄な修正作業を減らし、クライアントにも納得感のあるデザインを提供できるようになる。