PRODUCTION SIDE
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「ちょっと変えるだけだから」「これくらいで追加になるの?」そんな軽いノリで発せられたリクエストが、気づけば本来の契約範囲をオーバー。
見積書や仕様書には明記していたのに、いざ「ここからは追加費用が発生します」と伝えると、「え?聞いてない!」と不満げなリアクション。
でも忘れてはいけないのが、追加費用とは“わがまま料金”ではなく、れっきとした「技術料」と「人件費」。プロとしての知見や判断力、そして工数のすべてに対する正当な対価です。むしろ“無料で当然”という発想のほうが、プロフェッショナルに対して失礼だったりもします。
それでもなぜ、こうした“追加料金トラブル”が起こってしまうのか?
どうすれば、事前に防げるのか? 制作者視点で一緒に考えてみましょう。
「ここも、ついでに直してもらえます?」が10件以上。明らかに見積もり外の分量なので「修正がこれだけあれば、別途費用がかかります」と伝えると、「まぁまぁ、そんな細かいこと言わずに〜」と笑って話をすり替える担当者。そのまま実務を進めざるを得ず、いざ追加請求を出すと「上に通らなくて…」と、また曖昧な言い訳。
ヘラヘラした対応の裏で、こちらの時間と労力だけが真剣勝負。
「えっ、追加料金なんて書いてありました?」と平然と返される場面。確認すると、見積書や提案書にはしっかり明記済み。それでも「読んでませんでした」「そこまでは気づきませんでした」の一点張りで、制作側にだけ負担がのしかかる。
説明はした。でも、それを“読んでもらえるかどうか”は別問題。
「この修正も大丈夫ですか?」「じゃあ、こっちも…あ、やっぱりこっちも…」と、次から次へと修正が増えていく。まるで“修正し放題ランチバイキング”でも始まったかのような勢い。「この量はさすがに別料金です」と伝えると、「えっ、これくらいで?」と不満顔。
“ちょっとのつもり”が大皿料理に化けていること、本人はまるで気づいていない。
「追加費用が発生するかどうか」は、制作者にとって極めて重要なライン。
しかしクライアント側は、「ちょっとしたこと」「お願いベース」として要求してくることが多く、その“軽さ”が見積や契約の重みを曖昧にしてしまう原因になる。
問題は、追加料金の発生自体がトラブルになるのではなく、「それが事前に共有されていなかった/されたと思っていない」と感じることが、信頼関係にヒビを入れる点。
契約内容や作業範囲をきちんと説明し、それを記録に残すこと。
制作側の「丁寧さ」と「毅然さ」のバランスが問われる場面でもある。
どこまでが料金内か、どこからが追加かを明文化して渡す。
追加作業の際は、口頭ではなくメール・チャットで記録に残す。
「修正○回まで無料、それ以降は別料金になります」と最初に伝えることでのちの誤解を防ぐ。
たとえば「軽微な変更は1回まで無料」など、あらかじめ“ゆるやかライン”を作っておくとトラブルになりにくい。
制作業務は、目に見える成果物だけでなく、その裏にある無数の工数や判断、調整作業によって支えられています。「これくらいなら…」の一言で受け続けた小さなお願いが、やがて大きなコストになり、制作側にだけ負担がのしかかる構図は、もう終わりにしたい。
「どこまでが無料で、どこからが有料か」を決めるのは、あくまで制作サイドの権利です。
無料対応をするかどうかは“善意”であり、それを当然視された時点で関係は歪み始めます。
追加料金は“請求する側が悪”ではなく、正当な工数に対する“対価の可視化”であり、むしろプロジェクトの健全性を保つために必要なプロセスです。
曖昧な期待と現実のギャップを埋めるのは、「伝える力」と「守る姿勢」。
“丁寧に毅然と”、その一歩が関係性を壊さず守るカギになります。